Neoclassicism

 

25年前の自分を、迎えに行く。


25年前に仮組みしたっきり放置されていたボークスのインジェクションキット、GGIパトラクシェミラージュを完成させました。


GGIはGreat Garage Injectionの略、IMSナイトオブゴールドATの旧キットに相当します。

隙間はパテで適当に埋めてね、ポリキャップは適当に切ってねという牧歌的な作りですが、単純に完成させるだけならマテリアルもずっと豊富になった2020年代ならさしたる苦労はないとは思います。


ただ、なんか全体的なバランスがどこか芋っぽいんですよね。

ぬぼーってしてるんです。

90年代のMHのスタイリングだからというわけではなく、まだノウハウの蓄積していないGKメーカーがレジンの原型をプラキットとして量産するにあたって妥協したりオミットした部分があったんだろうと考えました。

クラシカルなMHとしての立ち位置を尊重しつつ古臭い印象にならないように気を配り、今の自分の精度を基準にすべてのパーツに手を入れ制作しています。


発売当時のホビージャパンの空山竜司氏の作例(当時の記事のコンビニコピーがずっと手元にありました)に勝ちに行く、それくらいの気概で臨みました。


キットの説明書の転載ですが、無改造のパトラクシェはこんな感じになります。


一番気になっていた場所がこのフロントスカートです。

設定上は前方2枚と側面1枚後方1枚で構成されていますが、前方2枚が一塊の板って感じで造形されていて色気に欠けていたので、分割したうえで少し間を持たせて配置しています。


またこのスカートのプレートに限らずほぼすべての面にヒケや歪み、それ以前にざらつきがあるのでデザインの意図を汲み取りながらひとつ残らず整面しています。

側面と後方のプレートの接続は汎用ボールジョイントで置き換えています。

各部のディテールはいったん落として整面後にプラ材で再生しました。

あ、スミ入れの拭き取り忘れは現像後に気づいて拭きました……


全体像を見ていると太ももの付け根がかなり下についており、胴長というか骨盤が上下に長い感じの印象を受けたので腰ブロックを上下に圧縮する形で詰めています。

こうすることでどっしりとした下半身にコンパクトな胸部が乗っかっているというテロルミラージュ的なプロポーションになりました。


あとこれは個人的な好みの問題ですが、足首の位置が前過ぎて身体の重心とずれていて違和感があったので後方にずらしています。

幸い初回特典のポリキャップが大量にあり、Bランナーのやつがちょうどよかったのでそれを使用しました。


足首のアーマーはキットの接続位置は均してしまって、単に足首に奇跡的なテンションで引っ掛けてあるだけです。

これで全く問題なし。


実剣の鞘はスカートの側面プレートにネオジム接続としており、剣を抜くといい感じに降りてきます。


キットでは実剣は2セット付属しますが、パトラクシェに実剣2本という印象がないので1セットのみ制作しています。


ファティマハッチは発売当時のホビージャパンの作例と同じように透明プラ板を張り込む形で対応しています。

セメダイン社のハイグレード模型用接着剤で貼り付けており中に気泡が入ってしまってしまったなーと思ったものの、まぁファティマハッチってそんな感じだった気もするのでこれはこれでありかと思えてきました。


両肩のナイトマスターの紋章はJOKER3100やF.S.S. DESIGNS 2の設定に準じる形で宗教画のようなスタイルで仕上げています。

高校時代のアクリラガッシュがあったのでタミヤアクリルのクリアーで溶きながら塗っています。

親の仇のようにモールドを深く彫り込んでいるため、絵柄としては細かいけれど引いて見た時にはクッキリとしたアイコンになってくれました。


肩のポリキャップはパテで囲い込んでいるほか、肩の内部ブロック自体を3本の金属線で締めているのでしっかりと保持できます。

運搬時などには緩めて外せるので、まぁある種簡易的なABSOMECみたいなもんです。

肩が一番顕著でしたが、25年前に中途半端に接着されていて整面しづらい箇所がそこかしこにありました。


25年前に切り刻んでいたにもかかわらずほぼすべてのパーツが揃っていたのでスムーズに制作ができましたが、唯一みぞおちの部位だけ見当たらなかったためジャンクパーツの中からデザイン的に馴染むものででっち上げています。

胸部や腰ブロックといった各所のリング状のモールドやリベット状のディテールはいったんピンバイスで穴を開け、整面後にプラ棒で起こしなおしています。

例えばメタルボールを用いたりといったディテールアップは昔から存在しますが、個人的な考えとしてメタルパーツはそこの部位だけ極端に解像度が上がってほかの部位とバランスが取れないため特別な理由がない限り使用していません。


肩甲骨に相当する位置の装甲はIMSのナイトオブゴールドなど最近の造形を参考にして浮かせて配置しています。

キットのそのままの状態だと背面にベタ付けでデザイン上の見せ場にならないだけでなく肩部装甲と大きく干渉するため、今回は角度をつけた状態でネオジム接続とすることで可動時のクリアランスと近代的デザインを同時に獲得しています。


また長く伸びたスタビライザーも保持力の低いネオジム磁石を用いることで破損防止になるだけでなく、回転させて多少の表情付けが可能になりました。


前髪スカスカ♡よわよわMH♡

アパッチなんかに倒されて自爆♡♡♡


DELTA BELUN 4100でオージェマスクのゴーズ騎士が出てきた際に確かケーブルが髪のようになっていたので、そんなノリでパトラクシェも髪を生やしました。

もうスカスカとは言わせません。

正面から見ると隙間から反対側が結構見える感じだったのが多少改善されたとは思います。


頭部の外周部のモールドはかなり浅かったので太めのラインで彫り直していますが、あんまししっかり彫ると主張しすぎるので抑えるのに気を使いました。


頭部の蓋は髪の調整などで容易に取り外せるように一体化はさせていません。

接着もしていないので乗っけてるだけ。

その代わり別パーツ感が中途半端にならないようにエッジは念入りに整えました。


脚部の赤ラインはナイトオブゴールドのデザイン上の大きな見せ場なのでミスったらドボンして何度でもやり直そうと思っていましたが、幸いにして一発OKでした。


太もも部は塗装後にぱっくり行ったら最悪なので、裏側からパーツをまたいでがっちり厚めのプラ板で接着して補強しています。

というか股関節の軸は一度折れたのでステンレス線で軸打ちしました。


すね部分は正面の段落ちがきれいに出るように気を使いつつ、後でトラブルに対応できるように接着せずに仕上げています。


騎体各部の赤はレーザー砲塔およびセンサーらしいですが、デカールなどを使えないパトラクシェでは貴重なアクセントなのでしっかり部分塗装しています。


バスター砲基部はパトラクシェの見せ場なので、丁寧に仕上げました。

この基部自体もネオジム接続で取り外し可能な作りとしています。


そのため白兵戦用バランサーと交換が可能です。

メトロテカクロム製なんじゃないかなー虚飾を排した殺意の象徴だし金のコーティングはせずに無垢じゃないかなーと考えて実剣の刀身と同じくスターブライトアイアンにしています。

バランサーの付いてるナイトオブゴールドATが今日日ありますか?ありません!


バックフェイスは必死に覗き込まない限り見えませんがちゃんと仕上げています。


頭部は細い首パーツの接着面積で支えられるようなものじゃないので、ホビージャパンの作例同様金属線を打ちました。

肩のボールジョイントも同様。おそらく完成させた人の8割くらいは軸打ちしているでしょう。

余談ですけど肘部分を塗装後に後ハメできるように、内側の五角形を作例と同様に別パーツ化しています。


今回の金塗装はテストピースでいろいろ候補があったものの、最終的にはメタリックマスターで希釈したEXゴールドの吹きっぱなしを採用しています。


これはすごい。

多分ガイアノーツの意図した通りの吹き方になっていると思いますが、ちょっとおもしろいくらい粒状感のない金の膜が生まれました。

しかも隙間なく金の粒子で埋まる感じなので、非常に少ないストローク数で済みます。

クリアーを吹くと少なからず表情は変化すると思われるのでトップコートは吹いていません。


関節部はミッドナイトブルーの旧カラーリングの方に準拠していますが、ソリッドカラーのままだと締まりすぎて浮くのでサファイアブルーのパールを吹いています。



--------------------



GGIパトラクシェミラージュを2021年7月から2022年3月まで8ヶ月かけて制作しました。


説明書通りに完成させること自体が目的であればそれほど難しいキットではありませんが、今の自分で納得できるものに仕上げよう、そう決めたら途端にハードルが跳ね上がりました。

手を入れても手を入れてもここでもう塗装に入っていいだろうという確信が持てない。

もともと手が遅いということもあって本当にしんどかった。



けどやっぱ悔しいじゃないですか。

25年前に塗装して完成させる気もないくせにいっぱしのモデラー気分で中途半端に手を入れて放置して、今また投げ出すの?


冗談じゃない。

やっとこういうキットと本気で殴り合えるようになったんだから。


25年前の自分に見せつけてあげたいじゃん、こんな作品を作れるようになったって。

25年の間にツールが進化した今だからこそ作れる、現存する完成品の中でぶっちぎりで洗練されたGGIパトラクシェを作ってやろうじゃん。




頑張った、は自分にかけちゃいけない言葉でしたっけ?

頑張った。



--------------------


P.S. どうやら20年前じゃなくて25年前だったようです……


--------------------



カラーレシピは以下の通り


本体(金):茶サフ(G)→EXクリアー(G)→EXゴールド(G)

関節部(青):黒サフ(G)→マーズダークブルー(G)→EXクリアー(G)→サファイアブルー(C)

ファティマハッチ:茶サフ(G)→EXクリアー(G)→EXゴールド(G)→EXクリアー(G)→純色グリーン(G)→蛍光ブルーグリーン(G)

脚部ストライプ(赤):グレーサフ(G)→モンザレッド(C)

刀身・白兵戦用バランサー:黒サフ(G)→EXクリアー(G)→スターブライトアイアン(G)

砲塔・センサー類・ミラージュマーク・眼:レッド(Ta)

桂冠エングレービング:チタンシルバー(Ta)→ホワイトグレー(S)

ナイトマスター紋章縁取り:チタンシルバー(Ta)→ホワイト(Ta)

ナイトマスター紋章内側:チタンシルバー(Ta)→アクリラガッシュのクリアー割り



スミ入れ


本体(金):ダークブラウン(S)

関節部(青):スミ入れ用ブラック(T)



トップコート


本体(金):なし

関節部(青):EXフラットクリアー(G)

ナイトマスター紋章内側:フラットクリアー(Ta)

※全体にクレオスのレジンコート使用



(C):クレオスラッカー系

(G):ガイアノーツラッカー系

(T):タミヤエナメル系

(Ta):タミヤアクリル系

(S):自作カラー